ソノケミストリー討論会講演論文集
Online ISSN : 2424-1512
セッションID: S2
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S2 音響化学療法の基礎と臨床(医学的・生化学的応用)
立花 克郎
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抄録

超音波エネルギーを体の一部に集中させ、限局された部位で薬物を化学励起させる新しいTargetingも考案されている。ヘマトポルフィリン誘導体は本来光エネルギーで励起される物質で、現在臨床でこの性質を応用した癌の光化学療法がすでに実用化されているが、超音波エネルギーでも同様の励起作用があることが梅村らにより発見され、新しく音響化学療法(Sonodynamic Therapy)として注目される。ヘマトポルフィリン誘導体の超音波励起方法は超音波治療に全く新しい概念をもたらした。超音波は物理的な振動とともに物理化学変化を引き起こす性質があるため、初め毒性がない同薬物が超音波照射後Free Radicalを産生し癌殺傷効果が誘発される。さらにこの薬物の細胞親和性を利用することで特定の癌細胞を選択的に超音波で殺傷できることが注目され始めた。成人T細胞白血病細胞に超音波感受性薬物ポルフィーマナトリウムが選択的に取り込まれるため、音響化学療法で血液を処理すると白血病細胞のみが殺傷され、正常白血球は温存されることが最近の研究で明らかになった。また大腸癌の肝転移および乳癌の皮膚転移における音響化学療法の臨床有効例が学会で発表されており、本格的な臨床治験が今まさに開始されようとしている。

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© 2003 日本ソノケミストリー学会
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