抄録
「必要は発明の母である」といわれる。技術革新は,サプライ・プッシュ(R&D / 売上比率の上昇)もあるが,価格変化を媒介とするデマンドブルが極めて大きい。第1次と第2次のオイル価格ショックはたんなる省エネルギー技術を向上させただけでなく,産業全体へとME(マイクロ・エレク卜ロニクス)革命をドラマティックに前進させた。現在進行中の貿易自由化による市場解放も価格引下げ効果を通じて製造工業部門――とくにハイテク関連産業の競争体質を一段と強化している。本稿はシュンペーター以来いわれてきた技術革新の理念的な役割を実証的な数量データと大型多部門モデルのフレームワークのなかで具体的な分析として展開し,日米構造協議等が意図する輸入大国化への道は貿易黒字削減のみならず,技術進歩の促進と物価の安定化にも貢献することを明示する。