2018 年 26 巻 1 号 p. 21-34
中国では2016年に税制改革が行われ,サービス業に対する営業税が廃止され,全産業が増値税(付加価値税)の制度に組み込まれることになった.中国ではこの改革を「営改増」改革と呼んでいる.本研究は,2016年の「営改増」改革に注目し,2012年の中国産業連関表を用いて,「営改増」改革による財・サービスの価格および所得分配への影響を分析する. 一般的に低所得層では消費性向が高いために,消費課税は所得額に対して逆進的である.本研究は,「営改増」改革よって消費課税である増値税の逆進性がどのように変化するかに注目する.分析結果からは,「営改増」改革よって逆進性が緩和するわけではないが消費財全般の価格低下によって,各階層の消費支出額が削減されることがわかった.このことにより,家計の厚生の改善には一定の効果があるといえる.