日本財団パラリンピックサポートセンターパラリンピック研究会紀要
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東京2020パラリンピック競技大会の多様な側面について
グドルン ドルテッパー
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2022 年 17 巻 p. 1-21

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抄録
本稿では,新型コロナウイルス感染症パンデミックのため極めて困難で挑戦的な条件・環境下で開催された東京2020パラリンピック競技大会のさまざまな側面に焦点を当てる。

東京2020オリンピック競技大会も,同様の困難な問題を抱えるなか,パラリンピックに先行して実施されたが,賛否両論を引き起こした。こうしたメガスポーツ・イベントを開催・主催することの意義や正当性について,さまざまな問題・課題が日本,ドイツをはじめ世界各国で議論された。主導組織である国際オリンピック委員会(IOC)と国際パラリンピック委員会(IPC)は,責任担当諸機関・組織と連携して,厳格な保健規則・制限の下で両競技大会を開催することを最終的に決定した。

本稿では,東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に対する全体的な認識においてどのような側面が特に注目されたかについて,ドイツの一研究者の立場から詳細に検証する。本稿第一部では,1964年に東京で開催され,早くも「パラリンピック」という名称が使用される大会となった「第13回国際ストーク・マンデビル競技大会」に特に焦点を当てる。東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に関しては,オリンピック選手およびパラリンピック選手の考えを考慮に入れると,特定の類似点と相違点がいくつか確認できる。オリンピックおよびパラリンピックのドイツ選手団の成績や結果に対する期待と実績などの主題を明示し,批判的に考察する。ドイツ人の視点から言えば,例えば選手のメンタルヘルスの問題,オリンピック競技大会への障がいのある選手の参加,パラリンピックスポーツにおけるクラス分けなど,スポーツ界においてのみならずメディアによっても議論された特定の問題がいくつか挙げられる。

本稿ではまた,パラリンピック・ムーブメントおよびパラリンピック競技大会にとどまらず障がい者スポーツの過去および現在の動向についても取り上げる。

さらに,ドイツと日本のスポーツ,とりわけユーススポーツにおいては,緊密な関係が存在することから,ドイツ・オリンピック・ユースキャンプ東京2020およびオリンピック期間中の青少年のオンライン交流について報告するとともに,パラリンピックスポーツの動向,障がい者と健常者のための包摂的なアプローチについても考察する。

東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会が終了した今,私たちは皆,どのような教訓を得たのかを自問する必要がある。東京2020と同様にパンデミックの課題に立ち向かいながら北京2022オリンピック・パラリンピック冬季競技大会に向けて,さらにはパリ2024オリンピック・パラリンピック競技大会,そしてそれ以降に向けての準備が 進められている。

将来のメガスポーツ・イベントの重要な側面として挙げられるのは,すべての当事者が負うべき責務として,サステナビリティ(持続可能性),および気候変動の最悪の影響の予防を考慮し,またそれらのための対策を実施することが含まれる。来るオリンピック・パラリンピック競技大会に向けて,IOCおよびIPCは,気候変動への対応に全力で取り組み,グローバルなアクションプランにおいて先導的役割を果たすことを表明している。
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