抄録
通常のシリコンデバイスが動作不能となる高温領域におけるセンシングシステムは、これまで不可能であった部分での直接計測を可能とし、また、高温に対する信頼性を高めることができることから、将来の制御システムにおけるエレクトロニクスの高信頼化に欠くことができない構成要素の一つとなるであろう。本研究では、優れた温度耐性素子を実現可能なSOI技術を用い、シリコンセンサ、信号処理集積回路の高温動作化と、その動作の高精度化を両立することでセンサシステムとしての高精度化・高安定化を実現する。シリコン集積化センサにおいては、その特性の大部分が信号変換部であるセンサとその初段増幅器部分で決定される。そこで、特性に最も大きな影響を与えるセンサ部の特性安定化として、定温度制御型SOI三次元加速度センサを実現した。応力検出素子をSOI基板の活性層で形成し、その部分をセンサ上に集積化したマイクロヒータと温度センサによって常時一定温度に保つことで、センサの温度特性を安定化する。また、初段増幅回路の高精度化においては、高精度アナログCMOS回路技術であるAutozero技術の適用を行った。回路利得は負帰還増幅で安定化し、入力のドリフトを自動補償で常時補償する。この際、高温時のFETリーク電流が深刻な影響を及ぼすが、本研究では回路構成によってこの影響を取り去り、Autozero増幅回路の動作上限温度を大幅に改善することを実現した。