抄録
ナノポーラス結晶12CaO7Al2O3(C12A7)の結晶構造は、正に帯電したかご状構造(ケージ)より構成されており、化学量論組成の場合、全体の1/6のケージに“フリー酸素イオン”と呼ばれるO2−イオンが包接されることで電荷の中性が保たれている。このフリー酸素イオンはCl−やOH−などの典型的な一価陰イオンから、O−やH−のような通常不安定な活性イオン、さらには電子(e−)への置換が可能であり、これによりC12A7に様々な機能性を付与できる。陰イオンが包接されたケージにおいては、そのイオンの負電荷によってケージ骨格の構造緩和が理論計算より予測されているが、実験的には明らかにされていない。本研究では、一価・二価陰イオンとしてそれぞれOH−、O2−イオンを包接したC12A7の放射光X線回折データをMEM/Rietveld解析を行い、それらの結晶構造の違いを明らかにする事を試みた。