抄録
これ迄の研究により、パルス電流を用いた電着が、直流電流を用いた電着に比べ、アパタイト膜の形成に有効であることが分かった。また、電着前に硫酸による酸エッチングを施し、電着後に試料に対して加熱処理を施せば、アパタイトとチタン基板間の接着強度を飛躍的に向上させ得ることも分かった。しかし、パルス電流の種々のパラメータがアパタイト膜の特性に与える影響については、未だ明らかでない。そこで、本研究では、パルス電流のパラメータの1つであるパルス幅に着目し、これを様々な範囲(1 ms~15 s)で変化させて純チタン(Ti)基板表面へのアパタイトコーティングを試み、パルス幅がアパタイト膜の特性に与える影響を調べた。その結果、パルス幅が短くなるに従い、アパタイトの剥離が起こり難くなっていることが分かった。特に、パルス幅が10 msおよび100 msで作製した試料については、スコッチテープの糊が基板に付着しており、これらの試料上に形成したアパタイト膜はある程度高い接着強度を有していることが分かった。これは、パルス幅が短くなるにつれて、析出するアパタイト結晶の微細化が進み、緻密で均質なアパタイト膜が形成されためと推察された。