2014 年 50 巻 4 号 p. 5-15
置塩信雄『蓄積論』(初版)は1967年に出版された。その後,世界や日本の経済が成長率の低下やさまざまな危機を経験する中で,経済理論自体も大きく変貌してきたが,現在の近代経済学(主流派経済学)の基本的な枠組みは変わっていない。これに対するマルクス経済学やポストケインズ派経済学などの批判的経済学にも新しい動きが出てきている。本稿は,置塩『蓄積論』の基本的メッセージを,(1)資本制の歴史性,(2)不均衡とその累積性,(3)利潤と投資の主導性,(4)資本制の長期法則の4点から整理し,現時点でその重要性を評価する。次に,批判的経済理論の一つとして最近多くの研究が行われているカレツキ等のポストケインズ派を対象に,その貢献と問題点を論じる。