哲学
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フッサールの論理学観
形式主義批判を中心として
高橋 哲哉
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1982 年 1982 巻 32 号 p. 160-169

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抄録

フッサール現象学の生誕の書が『論理学研究』であったことはよく知られていよう。現象学はまず何よりも、学問論 (Wissenschaftslehre) としての純粋論理学の理念を闡明し、その実現の端緒を拓こうとするこの書の努力の中で、「論理的なものの現象学 Phanomenologie des Logischen」 (LU.II/8,III) として登場してきたのである。その後、超越論的現象学の理念が確立されると、純粋論理学の基礎づけは課題の緊急性を失ったが、しかしフッサール思想における「論理的なもの」の意義は決して減ずることがなかった。というのも、フッサールは結局、「形式論理学」を「形式的学問論」として、「実質論理学」を「質料的学問論」として構想しただけでなく、それらに究極の権利を付与すべき超越論的現象学そのものにも、「究極の学問論」としての「超越論的論理学」の機能を認めていたからである (XVII,20,157f.,296)。それ故、フッサール現象学の意義と射程を見定めるためには、それらすべての企ての共通の根である「論理的なもの」、或いは一般にロゴス (Logos) なるものの本質を解明することが不可欠の作業であるが、本稿での我々の課題は、フッサールにおいて「論理的なもの」の理念のいわば母胎となった形式論理学の場面に照準し、そこでフッサールが行なった形式主義批判の内実を検討することによって、その作業の一端に寄与しようとすることである。

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