哲学
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デカルト『音楽提要』における「注意attentio」について
名須川 学
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1998 年 1998 巻 49 号 p. 191-200

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抄録

本稿は、デカルト (René Descartes, 1596-1650) の『音楽提要Compendium Musicœ』 (この著作名を以下『提要』と略記する) を時間論の観点から検討し、そこに現れる〈注意attentio〉概念の哲学的意義を明らかにすることを目的とする。
ここで、デカルト哲学における「時間」概念を整理した近年的達成の一つはベサードの主著『デカルトの第一哲学-時間と形而上学の整合性』である。この著作においてベサードは「時間」を点的な「瞬間 instant」と線的な「モマン moment」とに区別し、また、通常「瞬間」の性質を帯びるものと解釈されているデカルトの〈直観 intuitus〉も、やはり「持続」において把握されるべきものと主張した。本稿において「時間」という場合、このベサードに倣って、「幾何学における直線と同じ資格で連続的である」時間を意味するものとする。
この前提のもとに、次のような順序で議論を展開する。
先ず、『提要』第三章におけるリズム論を検討しながら、デカルトが「時間」を「幾何学」的なものとして捉えていると考えうることを確認する。
次に、この時間の計量化自体を成立させている共通尺度としての〈単位 unitas〉と、これが設定される場面に現れる〈注意 attentio〉という作用の関係を見る。
最後に、この〈注意〉作用が「時間」の計量化を支えながらも、それ自体としてはこの時間のディメンションの外側に位置付けられるものとして捉えられているということを論じ、併せて、このことがデカルトの哲学においてもつ意義を考える。

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