抄録
異常動脈と寄生動脈が腫瘍の位置と特徴を表わしている. これら動脈の分析から周囲への拡がりを推定できる. 腎腫瘍の副腎への直接浸潤は, 外科的アプローチや予後判定の上で重大な因子となりうる.
症例は57才の日本人女性で, 上記動脈分析の結果, 下副腎動脈, 腎被膜動脈, 腰動脈, 上副腎動脈 (下横隔膜動脈), と肝動脈右葉枝が寄生動脈として同定された. 肝動脈と腎動脈とは生理的吻合を持たないので, 病的吻合である. この吻合は副腎を介して形成されている. すなわち肝と副腎の間に血管性癒着が想定される. これは腫瘍性浸潤あるいは慢性炎症の波及によってできる.
また腎被膜動脈と副腎動脈は. その支流範囲内に悪性像を持ち, 悪性血管塊に参加している. 静脈相では副腎も異常濃染を示した. 上腎被膜動脈が右腎上極で上に凸の走行を示すことから, 腫瘍の進展ベクトルが推定される. 手術によって上記所見が確かめられた. 腎腫瘍が副腎に直接浸潤を示した症例を検討する上に, 栄養血管の詳細な分析が重要である.