抄録
近年, 驚威的な高分解能を有する透過型電子顕微鏡ならびに新しい超薄切片法の発達により, また直接生物の立体構造を電子顕微鏡で観察する走査電子顕微鏡の開発により, 超薄切片を用いた組織学的超微細構造の研究は非常に盛んになって来た.
我々は材料としては, まず手術時に採取した卵管および子宮内膜, ならびに妊娠初期, 中期および後期の胎盤絨毛組織につき, 日立走査型電子顕微鏡MSM-IIあるいはS-500を用いて, 直接倍率100-20000倍で組織表面の超微細構造を観察した.
卵管内膜, 子宮内膜の性周期性変化, 胎盤絨毛の妊娠経過に伴なう変化を走査電顕により観察すると, 卵管内膜は線毛細胞, 無線毛細胞および小桿細胞が見られる. 子宮内膜は大部分が無絨毛上皮細胞で被われている. これに混じって線毛細胞が散在しており, 胎盤絨毛は諸所にくびれやしわをもつ絨毛突起が全体として美しい樹枝状の構築をなす. 絨毛表面には妊娠初期, 中期, 末期を通じて密生するmicrovilliが存在する. それぞれ微的な像を認めることが出来た. これらの超微細構造と機能との関連性, ならびに今後さらに臨床像との関連性を含め追求していきたいと考えている.