抄録
先天性胆道閉鎖症 (以下CBAと略) にみられる著明な脾腫に着目し, 病理組織学的検索を施行した. 既に第一編 (本誌26巻・2号) に報告した如く, CBA肝の著明な胆汁性肝線維化と肝内門脈枝閉塞と, 腫大した脾にはいわゆるバンチ脾にみられる脾洞増生を始めとして, 高率に門脈圧亢進によると思われる所見を認め, 脾洞は脾洞増生の高度化に伴い, 細長く変化することを認めた.
本編においては, 各年令の対照例, 及び10才代と成人例のいわゆるバンチ症候群例の脾洞組織計測の結果を詳細に述べ, 対照例と門脈圧亢進症脾の対比, 年令変化の対照例及び門脈圧亢進症脾脾洞変化の差異, 傾向を検討した上で, CBAという乳児期の肝線維化による脾腫が, いわゆるバンチ脾としての所見を備えるかどうかの検討を施行した.
正常対照例において, 10才代例において最も長く容積率も大である脾洞が, 成人例では縮少するのに対して, 門脈圧亢進症における脾洞は, 高年令脾ほど細長く変化した.
この脾洞が細長くなる過程について検討すると, 年令変化による脾洞の細小化に, 門脈圧亢進による細小化が加味され, 又, 脾洞の脾索内への入り込みによると思われる異常な延長化が特徴的であった. 以上の所見は, CBA脾の脾洞組織学的及び形態的変化と同一の傾向を示し, 脾は乳幼児期バンチ症候群脾とみなし得ると考えるに至った.