順天堂医学
Online ISSN : 2188-2134
Print ISSN : 0022-6769
ISSN-L : 0022-6769
特集 輸血と血液製剤の現況とその問題点
輸血後肝炎
黒田 博之
著者情報
ジャーナル フリー

1988 年 34 巻 1 号 p. 27-33

詳細
抄録
輸血という治療法には多くの効用が認められているが, 副作用も注目され, 特にウィルスの持続感染の存在は医原性疾患として注意しなければならない. 輸血後肝炎は, 歴史的にウィルスとの関係を明らかにし, B型肝炎においては治療にまで進歩してきているが, 劇症型は致命的な経過をたどり予後が悪い. この他, 多くのウィルスが血液内に存在していることが推測され, それらの抗原・抗体系はまだ明らかにされていない. この非A非B型輸血後肝炎は増加の傾向を示し, 疾患として慢性肝炎・肝硬変・肝癌という永い経過をたどり, 5年, 10年, 15年とriskが高くなり, 持続感染が問題となる. 抗原・抗体系の発見こそが, 輸血後肝炎の予防にとって最も重要な点である. ウィルスの同定されていない現在, 非特異的なウィルスに対する治療は成果にも限度があろう.
著者関連情報
© 1988 順天堂医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top