順天堂医学
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原著
周生期性ステロイドと視東前野の性分化
--前腹側脳室周囲核の体積変化とアンドロゲンの芳香化--
町田 正弘
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1989 年 35 巻 3 号 p. 397-403

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抄録

視束前野の前腹側脳室周囲核 (anteroventral periventricular nucleus of the preoptic area: AVPvN) は性的二型性を示し, この神経核の体積は雌の方が雄に比べて大きいことが知られている. 本実験では, AVPvNの体積に対する生後早期発育期における性スイテロイド剤と抗エストロゲン剤 (タモキシフェン) 投与による影響を検討した. 実験は雌ラットに出生日より生後5日までの5日間, 皮下注射によりtestosterone (T) 500μg・5α-dihydrotestosterone (DHT) 500μg・estradiol (E2) 50μg・T500μgとタモキシフェン100μgをそれぞれ連日投与した4群に分け, さらにゴマ油みのを投与した群を対照として, 各群とも90日齢に屠殺しAVPvNの体積を比較検討する方法により行われた. AVPvNの体積は正常の雄に比べ正常の雌の方が有意に大きく, 約2.6倍であった. T投与群・E2投与群ともにAVPvNの組織像は雄のものに近くなり, その体積は正常雌群と比べて有意に減少し, 対照の雄と差は認められなかった. 5-αDHT投与群でも正常雌群と比べるとAVPvNの体積が有意に減少したが, T投与群・E2投与群, 雄の対照群よりは有意に大きかった. またTとtamoxifen同時投与群では, AVPvNの組織像も正常雌群のものに近く, その体積は対照の正常雌群と有意差が認められなかった. 以上の成績から, E2にも新生仔期のAVPvNの発育過程においてT類似の働きがあることが示唆され, Tと抗エストロゲン剤 (タモキシフェン) を同時に投与した群において, Tを投与したにもかかわらずAVPvNの体積減少が見られなかったことは, Tが芳香化酵素の作用によってエストロゲンに転換されてAVPvNに作用したものと思われる.

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© 1989 順天堂医学会
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