抄録
近年, 臨床各科の患者に対して精神科医がその治療に関与するコンサルテーション・リエゾン精神医学という概念が導入され, 総合病院における精神科診療のあり方が従来の精神分裂病中心の診療から変化してきている. 順天堂大学医学部附属順天堂医院 (以下当院) においても臨床各科に入院中・外来通院中の患者の治療に対して精神科が助言を行ったり, また直接的な治療を行う機会は非常に多い. 今回はこのような精神科のコンサルテーション・リエゾン活動の中でも, 他科との「兼科」患者の実態について調査することによって, 臨床各科に入院中の患者に対する精神科の直接的な治療による関与の現況を検討した.
当院に1986年4月から1989年3月までの3年間に精神科と兼科になった他科入院患者はのべ91人で, 兼科依頼科は麻酔科を除く全診療科であった. 依頼理由として最も多かったのは『不穏・興奮』で24.2%, 診断名ではせん妄が22.0%と最も多かった. また, 入院後に初めて精神症状を出現させた患者群が79.1%で, 以前より精神科受診の既往のある患者群より圧倒的に多かった.