順天堂医学
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原著
モルモット単一心室筋におけるアデノシンのカルシウムチャネル電流抑制の機序
加藤 理
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1991 年 36 巻 4 号 p. 517-526

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抄録
アデノシン (Ado) のCa2+チャネル電流抑制の機序を解明する目的でモルモット単一心室筋細胞に細胞接着型パッチクランプ法を行い, 単一Ca2+チャネル電流を記録した. 電極は50mMあるいは100mM-Ba2+を含むものを使用した. Ca2+チャネル電流の平均電流は, 100nM-イソプロテレノール (ISO) で対照の2-3倍まで増加したが, 0.1mM-Adoの潅流液中への添加で対照レベルまで減少した. この一連の変化は1000nM-BAY K8644存在下でも認められた. チャネルの開孔を含む掃引の割合 (利用可能性Ps) はIS0で増加し, Adoはこれを減少した (対照0.29±0.09;ISO0.62±0.13;Ad0およびISO0.37±0.15;平均±S. D. 5例). Ca2+チャネル電流を含む掃引でみた開確率 (Po) はほとんど影響をうけなかった (対照0.08±0.06;ISO0.08±0.06;AdoおよびISO0.06±0.03). BAY K8644存在下で求めた単一Ca2+チャネルコンダクタンスは約24pSで, ISOおよびAdoに影響されなかった. チャネル利用可能状態の平均持続時間はIS0で増加し, Adoの添加で減少した. 一方, チャネル非利用状態の平均持続時間はISOで減少し, Adoの添加で増加した. 以上より, Adoはチャネルの遅いゲート過程を修飾しチャネル利用可能性を減少することにより, Ca2+チャネル電流を抑制すると結論された.
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© 1991 順天堂医学会
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