順天堂医学
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原著
宿主栄養状態とLAK移入療法の効果に関する実験的検討;マウスでの検討
四蔵 朋之
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キーワード: マウス, 低栄養状態, LAK細胞
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1992 年 38 巻 1 号 p. 62-70

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抄録

癌悪液質患者では低栄養状態と免疫能の低下が認められ, この状態では能動免疫療法の抗癌効果は期待できないことが知られている. 他方, 宿主の免疫状態を介す必要のない受動免疫療法ではどうかということに興味がもたれる. この問題を解明する一助として, 受動免疫としてlymphokine activated killer cells (以下LAK細胞) を用いて実験的に検討した. マウスC57BL/6を用い, まず普通栄養マウスおよび低栄養マウスを作成し, 背部皮下腫瘍の増殖と宿主の栄養状態との関係を観察した. つぎに普通栄養マウスと低栄養マウスの両群に、マウスメラノーマ細胞BL6 5×105個を尾静脈から静注移植し, 肺転移モデルを作成することにした. これら対象をBL6移植直後にLAK細胞l×107個を静注したLAK治療群と非治療とに分け, 肺転移結節数および生存日数を比較検討した. またLAK療法が宿主におよぼす影響をみるために, 体重・血清総蛋白量・血清アルブミン量・末梢血のリンパ球サブセットについても比較検討した. 背部担癌モデルでは, 普通栄養マウス・低栄養マウスともに腫瘍の増殖に差はみられなかった. また肺転移モデルでは, 普通栄養マウス・低栄養マウスともにLAK治療群は非治療群に比し肺転移結節数が少なく, 生存日数の延長が認められた. さらにLAK治療が宿主に及ぼす影響としては, 低栄養マウスではLAK治療群は非治療群に比し体重の維持が認められた. 血清総蛋白量とアルブミン量, および末梢血リンパ球のサブセットについてはLAK治療による影響は認められなかった. これらの結果, LAK細胞移入療法は担癌宿主が低栄養状態であっても抗癌効果を発揮する治療法の一つとなる可能性のあることが示唆された.

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© 1992 順天堂医学会
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