順天堂医学
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原著
イヌにおけるAdriamycin (ADR) 肝動注後および模擬血漿交換併用時の血中ADR動態に関する基礎的検討
菅野 勉
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1992 年 38 巻 1 号 p. 95-102

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抄録

Adriamycinを用い静脈投与時と肝動注投与時との末梢血中濃度を比較した. さらに肝動注療法後に模擬血漿交換を併用し, 全身に移行したADR濃度の軽減を試みた. 雑種成犬9頭を用い静脈投与群・肝動注単独群・模擬血漿交換併用群に分けて検討した. 薬学的動態の検討は台形法によった. 前期薬剤分画 (以下AUC5→30) は肝動注単独群では平均3.66μg/ml/min, 静脈投与群では平均4.89μg/ml/minと肝動注単独群のほうがやや少なかった. 後期薬剤分画 (以下AUC30→120) は肝動注単独群では平均3.33μg/ml/min, 静脈投与群では平均2.85μg/ml/minと逆に肝動注単独群の方が多かった. 全期薬剤分画 (以下AUC5→120) は肝動注単独群では平均6.98μg/ml/min, 静脈投与群では平均7.74μg/ml/minとほとんど同程度の量であり, よって静脈投与群では前期に肝動注単独群では後期に薬剤分画が多いものの, 肝動注単独群では薬剤が肝臓を通過後かなりの量が全身にleakされていた. また模擬血漿交換併用群では, AUC5→30は3.66μg/ml/minと肝動注単独群とほぼ同じ量であったが, AUC30→120は3.33μg/ml/minとかなり少なく, 模擬血漿交換によって約2.3μg/ml/min (AUC5→120の約44%) のADRが除去しえた.

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© 1992 順天堂医学会
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