順天堂医学
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特集 注目される感染症
ニューモシステイス-カリニ肺炎の遺伝子診断
中村 義一
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1994 年 40 巻 3 号 p. 291-299

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抄録

カリニ肺炎は日和見感染症の一つで, ニューモシスティス-カリニの感染・増殖によりおきる. この疾患は免疫不全患者に発症しやすく, AIDS患者の死因の第一位を占めている. ニューモシスティス-カリニは真核微生物であるが, AIDSの流行による発症急増まで基礎的な研究がほとんど行われなかった. このカリニ肺炎パラサイトの分類に関しては, これまで原虫説と真菌説とが対峙し結論に至っていなかった. われわれはニューモシスティス-カリニから5SリボゾームRNAを分離し, その塩基配列を決定することによって, 分子系統学的にこれが原虫と菌類の中間種であることを明らかにした. さらにこの分析結果を利用して, 5SリボゾームRNA遺伝子のPCR増幅法による実用的なニューモシスティス-カリニ遺伝子診断法を臨床的に確立した. すでに広範な臨床応用が国内で実施され, その有効性が実証された. このPCR診断は患者の治療効果の判定や, 副作用の回避・投薬プロトコル作成にも顕著な効果を示した.

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© 1994 順天堂医学会
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