順天堂医学
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特集 神経科学における最近のトピックス
随意運動における大脳基底核の役割
彦坂 興秀
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1995 年 41 巻 2 号 p. 186-194

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抄録
大脳基底核はどのような神経回路から成り, どのような情報処理を行って, 運動や行動の制御に関わっているのだろうか. われわれが対象としてきた行動は眼球運動, とくにサッケードである. 視覚情報は網膜から中脳にある上丘に送られ, そこで運動清報に変換される. その上丘の出力層には大脳皮質や基底核など他の多くの人力が収束する. サルを使った行動生理学的研究によって, 我々はいくつかのことを明らかにした. (1) 上丘への入力は基底核のなかでも黒質網様部から送られる. (2) これはGABA作動性の抑制性結合であり, しかもふだんきわめて強く持続的に働いている (黒質網様部ニューロンの自発活動はきわめて高い). (3) しかしその持続的抑制は適当な条件で解除され (黒質ニューロンの活動が停止することによって), その結果, 上丘ニューロンの脱抑制をもたらす. これによって多くの場合, 上丘ニューロンはバースト活動をおこし, その結果サッケードがおこる. (4) さらに, このような黒質ニューロンの活動の停止は, 尾状核からの抑制性入力 (GABA作動性) によっておこる.
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© 1995 順天堂医学会
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