抄録
網膜入力はその三次元実空間解釈に曖昧性を持つ. その具体例として有名な『図地反転』や, 仮現運動における多義性の現象などを挙げることができる. この曖昧性を解いて外界適応的な三次元解釈に到達することが, 視知覚系の課題と考えられている. ここでは特に運動知覚や注意の諸現象を取り上げ, 視知覚系の情報処理の特徴を示す. 心理物理学的な測定によってこの曖昧性解決過程の特性を明らかにし, これをさらに計算理論や中枢神経系の生物学などと比較検討することよにより, 神経情報処理の機構と機能が理解されつつある.