順天堂医学
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特集 腎泌尿器疾患の基礎と臨床
腎尿路系の発生と疾患との関係
坂井 建雄
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1995 年 41 巻 3 号 p. 296-302

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抄録
腎臓は, 中間中胚葉に由来するが, とくにウォルフ管の末端部から伸び出した尿管芽と骨盤部の中間中胚葉である造後腎胚芽組織から, 後腎として生じる. 分岐を繰り返す尿管芽の末端部に誘導された造後腎胚芽組織内の小胞から, 糸球体とネフロンの尿細管部が生じる. 糸球体ははじめコンマ状, さらにS字状の形をとり未熟な毛細血管ループとして成立する. 人間における胎生後期, ラットにおける生後初期の腎機能の発達は, 糸球体数の増加によってではなく, おもに未熟な糸球体の成長によるサイズの増加によって行われる. この糸球体サイズの成長にあたっては, 糸球体毛細血管の総延長の増加, ならびに分岐数の増加が認められるが, それとともに糸球体基底膜の表面積もいちじるしく増大する. この糸球体基底膜の表面積を増加させる装置ではないかと注目されているのが, 膨出部outpocketsという構造であるが, 渡辺らの最近の研究では, この膨出部は成長期にわたって糸球体の周縁部にのみ認められる. 周縁部で作られた基底膜物質が, 糸球体全体にどのように再配分されるかという機構については, まだ分かっていない. またこのような成長期の糸球体では, 片腎摘出などの処置により糸球体が異常に大型化し, 糸球体障害が起こることが知られている.
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© 1995 順天堂医学会
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