順天堂医学
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原著
非小細胞性肺癌切除156例の予後因子解析
見上 光平
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1996 年 41 巻 4 号 p. 444-454

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抄録
1984年から1994年までの間に当科において手術を施行した原発性肺癌166例のうち, 非小細胞性肺癌切除156例について予後に影響を及ぼす諸因子を統計学的に検討した. 全症例の1年生存率は79.9%・3年生存率は57.4%・5年生存率は50.0%であった. 予後因子として検討した項目は年齢・性別・performance status (PS) ・ヘモグロビン値・CEA値・重複癌・喫煙歴・T因子・N因子・M因子・切除術式・手術根治度・周術期輸血・プラチナ製剤による術後化学療法の15因子である. これらの項目について, 単変量解析および多変量解析を施行した. 1) 予後因子別に単変量解析した結果, PS・T因子・N因子・切除術式・手術根治度の5因子において生存率に有意差を認めた. 2) Coxの比例ハザードモデルを用いた多変量解析ではN因子が最も予後と相関し (p<0.0001), 以下順にPS・組織型・年齢・T因子・性別の6因子が統計学的に有意な因子として確認され, 周術期輸血・切除術式がこれらに続いた. N因子についてp-N2症例38例を対象に分析した結果, 右上葉の癌は上縦隔リンパ節群 (#1-#4) へ, 左上葉の癌は大動脈リンパ節群 (#5, #6) へ, 左右下葉の癌は気管分岐下リンパ節 (#7) への転移率が有意に高かった. 38例中22例が再発死し, 中間無再発期間は9.4ヵ月, 中間生存期間は17.5ヵ月であった. p-N2症例を画像診断上のN因子 (c-N因子) と予後について検討した結果, c-N0, N1とc-N2との間に有意差があり, p-N2の予後因子と考えられた. 以上より肺癌切除後の予後の改善には系統的なリンパ節郭清と予後不良群に対する適切な補助療法が必要と考えられた.
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© 1996 順天堂医学会
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