順天堂医学
Online ISSN : 2188-2134
Print ISSN : 0022-6769
ISSN-L : 0022-6769
特集 周産期医学の進歩
胎児循環器系疾患の診断と治療
西本 啓
著者情報
ジャーナル フリー

1998 年 43 巻 4 号 p. 542-547

詳細
抄録
1993年9月から1997年8月までの4年間に, エコー検査にて胎児循環器系疾患と診断されて本院産科による母体管理下に院内出生した19例を対象とし, 出生前後の診断, 管理・治療および予後を後方視的に検討した. 胎児診断では心奇形6例・不整脈8例, および心臓腫瘍 (横紋筋腫) 5例であった. 出生後診断では14例は胎児診断と一致した. 分娩管理は全例待機分娩とし, 6例では予定帝切とした. 治療は, 動脈管依存性心疾患の5例には出生直後よりPGE1を持続投与. 重症型大動脈弁狭窄の1例には日齢1でバルーン弁形成術を施行. 頻脈性不整脈の3例では胎児治療を試みるも無効で出生後に薬物療法を行い, 2例では直流通電が必要であった. 完全房室ブロックの3例は生後人工ペースメーカーを装着した. その結果, 左心低形成の1例と完全房室ブロックを合併した重症型肺動脈弁狭窄の1例が新生児死亡したものの, 他の17例の経過は良好であった. したがって, 従来では生存困難と思われてきた重症心疾患においても, 正確な胎児心疾患の診断は新生児の予後の改善に有効と思われる.
著者関連情報
© 1998 順天堂医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top