抄録
新生児医療が進歩した現在でも, 早産・未熟児の新生児死亡率は高く, 生児においても後の脳障害, 呼吸器障害, 発達障害などの大きなリスクを背負うことになる. したがって, 早産を予防すること, また, 例え早産となった場合もその合併症を最小限にすることが, 現在の産科医療には求められている. しかしながら, 産科医療の進歩にも関わらず, 早産・未熟児の出産数は減少しておらず, 最近では不妊症の治療による多胎妊娠の増加がクローズアップされ, それに伴う未熟児の頻度も新たな問題となってきている.
一般に早産の原因の3分の1は前期破水による早産である. 当院でも前期破水による早産が, その原因として多くはなっているが, その他の原因として母体合併症の影響による早産や胎児奇形に伴う早産が多いことが特徴としてあげられる. このように, 必ずしも子宮収縮抑制を行い, 未熟児の出産を予防することだけが, 未熟児の予後を改善させる手段ではない. われわれはこのため早産にしなければならない児に対しては, 未熟児の合併症を最小限にするため, 経母体的ステロイド投与を行っている. また, 実験的には膀帯動静脈A-V ECMOを用いた未熟胎仔子宮外胎仔保育システムの開発を研究し, 新生児未熟児医療への負担を少なくすべく研究も行っている.