順天堂医学
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原著
肥大型心筋症における心筋層構造の改築
とくに錯綜配列との関係について
貞刈 暢代河合 祥雄
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1998 年 43 巻 4 号 p. 613-622

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抄録
目的: 肥大型心筋症 (HCM) において, 心室壁を構築する筋層のレベルでいかなる変化がみられるかについて検索し, さらに錯綜配列との関係について検討する. 対象: 臨床および剖検にてHCMと診断された12例 (平均年齢42歳), および肥大心を含む対照心7例 (平均年齢47歳). 方法: 臨床および剖検にてHCMと診断された12例 (平均年齢42歳) の中間部両心室横切面ルーペパノラマ写真上で層構築を肉眼的に観察し, 心室中隔・前・側・後壁各部位において層構造の乱れを点数化し, 組織学的に評価し点数化した錯綜配列の程度と比較検討した. またHCM症例12例中7例 (平均年齢29歳) において, 心室中隔筋層の10点で心筋線維の走行角を求め, 肥大心を含む対照心7例 (平均年齢47歳) と比較した. 結果: HCMの心室中隔では, 肉眼的に中層輪状筋構造が消失し, 特に非対称性中隔肥厚例において顕著であった. 層構造の乱れと心筋細胞レベルの錯綜配列程度は粗に正相関した. 5/10中層部, 6/10中層部の心筋の走行角は, 対照群15.6±7.0度. 11.4±4.3度と比較的浅い角度, すなわち, 水平な輪状に近い角度を示したのに対し, HCM群ではそれぞれ32.8±8.5度, 22.0±4.0度と有意に高かった (p<0.01). 結論: HCMでは細胞. 筋束レベルのみならず, 層構造レベルにおいても, 様々な程度の構築異常が認められた. 特に中層輪状筋は肉眼的にその層構造が失われ, この所見は心室中隔において顕著であった. 層構造の乱れと心筋細胞レベルの錯綜配列は粗に相関した. 心室中隔における心筋の走行角は, HCMでは有意に深く, 中層輪状筋正常構造の消失を示した.
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© 1998 順天堂医学会
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