順天堂医学
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総説
わが国におけるHelfcobacter pyloriの疫学と胃がん
菊地 正悟
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2001 年 46 巻 3 号 p. 286-292

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抄録

Helicobacter pyloriはわが国では年齢とともに陽性率が高くなる. 同胞数が多い人, 父親や同胞に胃疾患がある人に陽性率が高いことから小児期の感染が重要であると考えられる. 喫煙者や飲酒者で陽性率が低くなる傾向があり, ニコチンやアルコールがこの細菌にとってすみにくい環境をつくることが考えられる. H. pyloriが感染すると, 血清pepsinogen I, IIとも上昇し, I/II比は低下する. 7年間追跡して長期的な影響を調べた研究では, H. pylori陽性者は陰性者に比べ, I/II比が低下する頻度が有意に高い. 胃がんの原因となることは, これまでの血清疫学的研究に加えて, スナネズミによる動物実験で発がん促進作用があることが確認されたことから確実である. H. pyloriの除菌による胃がんの予防が考えられるが, そのためにはH. pyloriの作用時期の特定が重要である. H. pylori陽性率の減少によって噴門部がんや, 食道下部腺がんの増加が予想されるが, 胃がんの減少に比べればわずかであると考えられる.

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© 2001 順天堂医学会
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