抄録
社会的に注目度が高いアルツハイマー病に関する近年の研究成果はいちじるしい. とくに, 20世紀半ばからの神経病理学, 神経化学, 分子生物学, 分子遺伝学などにより, アルツハイマー病では遺伝的要因と環境因子が関わってβアミロイド蛋白や異常にリン酸化されたタウ蛋白などが脳内に沈着することによって神経細胞変性や神経伝達物質異常が起きることが本質的病態であることが明らかとなってきた. これらの所見を基に, 症状の進行を遅らせる治療薬が開発されているが, 現段階ではあくまでも対症療法の域を出ないため患者心理を理解した上での望ましい周囲の対応が必要である. しかし, 近年の新たな知見により今後はより根本的な治療薬の開発が期待されている.