順天堂医学
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特集 アルツハイマー病医療の最前線
アルツハイマー病発症と食事栄養因子
大塚 美恵子
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2001 年 47 巻 1 号 p. 36-44

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抄録

AD患者64例と対照80例の食事摂取栄養を比較検討した. AD患者は偏食が強く, 魚・野菜・キノコ・海藻の摂取が有意に少なかった. 栄養素ではビタミンB群・ビタミンC・β-カロチン・カルシウム・鉄・リンなどの微量金属の摂取が有意に低くかった. 脂質では魚に多いn-3系多価不飽和脂肪酸 (PUFA) と肉に多いn-6系PUFAとの比 (n-6/n-3比) が有意に高く, アポE-ε4保有例ではn-6/n-3比が低いほど発症年齢が遅かった. 以上の結果はADの発症に食事栄養因子が関連していることを示し, n-3系PUFAはアラキドン酸カスケードの抑制による抗炎症作用や血管・血小板を介して作用を現わすと考えられる. ビタミンCやβ-カロチンなどの抗酸化物はフリーラジカル産生の抑制に関与すると推定される. さらには, ビタミンB6・B12・葉酸欠乏は高ホモシステイン血症を介してAD発症に関係すると考えられる. n-3系PUFAであるEPA製剤の投与はAD患者の認知機能を改善させたがその効果は3ヵ月程度の一時的なものであった. すなわち食事栄養因子は痴呆の一次予防としてはきわめて重要であるが, 治療に応用するには限界がある.

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