順天堂医学
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特集 生活習慣病と消化器疾患
生活習慣病と食道・胃疾患
永原 章仁佐藤 信紘
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2004 年 50 巻 4 号 p. 322-329

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抄録
胃食道逆流症 (Gastro Esophageal Reflux Disease;GERD) は, 胃酸が食道内に逆流する病態からつけられた診断名であり, 内視鏡的な逆流性食道炎と内視鏡所見がなく胸やけ症状のみの症候性GERD (S-GERD) を包括した診断名である. GERDではいちじるしくQOLが低下しており治療する臨床的意義は大きい. 肥満者で多く見られるが, これは食道裂孔ヘルニア, 腹圧の上昇, 胆汁・膵酵素の分泌が多いことなどによる. また, 高齢女性に多く見られる圧迫骨折 (円背) は食道裂孔ヘルニアを助長する. 一方, S-GERDは若年女性に多く見られるがその病態には酸に対する食道の知覚過敏が関与している. 胃癌は食塩摂取・喫煙・飲酒などが危険因子として知られている. H. pylori陽性者から多く発生し, 前癌病変 (萎縮性胃炎など) のない患者では除菌により癌の発生は抑制される. インドなど西アジアではH. pylori感染率が高いにもかかわらず胃癌発生率は極めて低く地域差がある. その理由としてH. pyloriの菌株や宿主免疫反応などの違いが報告されているが, 明確には説明されておらず, 今後の研究が待たれる.
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© 2004 順天堂医学会
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