順天堂医学
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原著
コラーゲン誘導関節炎の発症に及ぼす抗体遺伝子の影響
趙 京元張 丹青黒澤 尚広瀬 幸子
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2004 年 50 巻 4 号 p. 383-391

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抄録

目的: タイプIIコラーゲン誘導関節炎 (collagen-induced arthritis: CIA) はヒト関節リウマチ (rheumatoid arthritis: RA) のモデルとして広く研究に用いられている. RAがMHC (major histocompatibility complex) の特定のハプロタイプと相関するように, マウスCIAもマウスMHCであるH-2ハプロタイプに拘束される. 本研究ではMHC以外のCIA感受性遺伝要因として免疫グロブリン重鎖遺伝子 (Igh) アロタイプが関与する可能性について解析することを目的とした. 材料および方法: C57BL/6 (B6) マウス (H-2b, Ighb) にIghaアロタイプを導入したB6. Igha-congenicマウス系 (H-2b, Igha) を樹立した. また, IgGFcレセプターγ鎖 (FcRγ) をノックアウトしたB6. FcRγ+とB6. Ighaを交配してB6. Igha. FcRγ-/-マウス系を作製した. これらのマウス系にウシ関節由来のタイプIIコラーゲンを免疫し, CIAの発症について臨床的ならびに病理組織学的な評価を行った. 結果: 本来H-2b型のB6マウスはCIA抵抗性で病態を発症しなかったが, B6. Igha-congenicマウスはH-2b型であるにも関わらずCIAを発症した. 発症率は雌で20%, 雄で54.4%であり, 雄で有意に高かった (P<0.05). 血中抗コラーゲン抗体価は, B6. IghaではB6に比較して, IgG1およびIgG2aサブクラスの抗体価が高かった. 一方, B6. Igha. FcRγ-/-マウスはB6. Ighaと同程度の抗体価を示したが, CIAの発症は認められなかった. 結論: CIAの発症にH-2以外の遺伝要因としてIghアロタイプが重要な役割を担っていることが示された. CIAの病態形成には抗タイプIIコラーゲン抗体の存在が必須であり, 抗コラーゲン抗体と抗原で形成される免疫複合体が, FcRγを持つ好中球やマクロファージなどの炎症細胞を活性化することで関節の炎症を惹起すると考えられた.

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© 2004 順天堂医学会
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