順天堂医学
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原著
消化器癌化学療法における治療効果判定指標としてのQOLの有用性の検討
-EORTCQLQ-C30を用いて-
加藤 順子永原 章仁飯島 克順芹澤 信子長田 太郎吉澤 孝史佐藤 信紘
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2006 年 52 巻 1 号 p. 94-102

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抄録

目的: 消化器癌化学療法でquality of life (QOL) 調査表を用いた研究はほとんどない. 消化器癌の入院化学療法においてQOLが治療効果判定の指標となりうるかを明らかにする. 対象および方法: 入院化学療法を予定された消化器癌患者43名を対象とし, 日本語版EORTC (European Organization for Research Treatment of Cancer) QLQ-C30 (ver3.0) (QLQ-C30) を治療前, 治療開始2週間後, 治療開始1ヵ月後に実施した. 治療後1ヵ月に画像にて効果判定を行ない, 治療効果群別での治療前後におけるQOLの変化を比較検討した. 結果: 治療効果判定可能例は41例であった. 調査票の回収率は, 2週間後で95.1%, 1ヵ月後で85.4%であった. 治療効果判定結果は, Partial Response (PR) 14例, No Change (NC) 16例, Progressive Disease (PD) 11例であった. 治療前後の各スケールの変化をみると, global QOL (総括的なQOL) は治療効果の有無に関わらず改善した. PD群では身体的活動性physical, 認識する活動性cognitive, 社会的活動性socialが治療前と比較し有意に悪化し, roleで悪化傾向を認めた. PR, NC群ではほとんど変動がなかった. PR, NC群では悪心・嘔吐nau-sea and vomitingが2週間後で有意に悪化を認め1ヵ月後で回復し, 不眠sleep disturbance, 下痢diarrheaでも同様の傾向を示した. PR, NC群では痛みpainが有意に改善した. 疲れfatigueは治療にかかわらず全群で高値が持続した. 結論: 治療効果別のQOLの検討では非奏効群であるNC群においてもPR群とほぼ同等なQOLの改善を認めた. このことから腫瘍縮小効果が十分得られなくとも, QOLの改善を認めたNC群は『QOL奏効群』として臨床的意義は大きいと考えられた.

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© 2006 順天堂医学会
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