抄録
血管の炎症は動脈硬化の病態のさまざまな局面に重要な役割を果たす. 特にマクロファージの活性化は動脈硬化病変の破綻や血栓形成を誘導することにより, 急性心筋梗塞の発症に寄与すると考えられる. 従って, マクロファージの生物学は動脈硬化の病態理解の鍵である一方, 診断と治療のターゲットとして重要である. 高コレステロール血症はマクロファージの活性化の原因となり, 急性心筋梗塞の危険因子である. 近年, 脂質低下療法は抗炎症作用を有し, 急性心筋梗塞の発症を低下させることが明らかになった. 一方, 分子イメージングは血管のマクロファージ活性化を描出でき, 従来から知られている危険因子の有無に関わらず, 将来の冠事故の予知・予防に有用であることが示唆される.