順天堂医学
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第19回都民公開講座《睡眠時無呼吸症候群――健やかな睡眠のために――》
睡眠時無呼吸症候群
循環器系・代謝内分泌系などへの影響
岩間 義孝
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2007 年 53 巻 2 号 p. 278-287

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抄録

睡眠時無呼吸が頻繁におこると, 睡眠が分断され日中に過度の眠気を伴い生活の質を低下させる. また, いびきをかくことも多く, ベッドパートナーに迷惑をかける. しかし, この睡眠時無呼吸症候群が臨床的に注目されている理由は, 高血圧, 糖尿病, 心臓病, 脳血管疾患などと密接に関連するからである. 睡眠時無呼吸を有する患者は, 一般人口と比較して, 高血圧が約2倍, 虚血性心疾患が約3倍, 脳血管疾患が3-5倍の頻度で合併すると報告されている. 米国のデータでは, 睡眠1時間あたり20回以上無呼吸がある患者をそのまま放置すると, 9年後には10人のうち4人は心臓病・脳血管障害などで亡くなっていたという衝撃的な報告がある (図-1). 睡眠時無呼吸症候群が心血管疾患に影響を及ぼす理由は, 繰り返す低酸素状態, 交感神経の活性化による悪影響, 肥満に伴う冠危険因子 (高血圧・高脂血症・糖尿病など) の増加などが考えられている. また, 睡眠時無呼吸症候群の治療が心血管疾患自体の予防・治療につながる. なかでも生活習慣の改善は睡眠時無呼吸症候群および心血管疾患自体の予防・治療にとって重要である. 睡眠時無呼吸症候群の患者の中には, 食事・運動をはじめとした生活習慣の改善をはかり減量に成功した結果, 睡眠時無呼吸が改善しCPAP治療 (睡眠時無呼吸の治療機器) をやめられる方もある. 眠りには, 質の良い眠りと悪い眠りがある. 良く眠れたときは, 目覚めが良く頭がすっきりしている. 活動的な質の良い生活を送るためには, 良い睡眠は欠かせない. 睡眠時無呼吸症候群の予防・治療を行うことにより,“健康に生きること”が約束されることになる.

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