順天堂医学
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大腸癌個別化化学療法
落合 匠
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2008 年 54 巻 1 号 p. 16-24

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抄録

大腸癌を含め消化器癌において個別化治療を目指すにあたり, key drugである5-FUの抗腫瘍効果を見極めることが非常に重要となる. 今回大腸癌を中心に5-FU効果発現関連酵素である, OPRT, TS, DPDを用いて層別化すなわちHigh risk groupの選別を, また抗癌剤感受性試験 (CD-DST) を用いて個別化治療戦略立案を試みたので報告する. OPRT, TS, DPDを用いた層別化: Dukes B, C症例においてOPRTのみが予後予測因子と成り得た. OPRTによりHigh risk groupの層別化が可能となった. OPRTは非常に有用なマーカーと考えられた. CD-DSTを用いた個別化治療: 複数の5-FU接触条件におけるAUCと増殖阻止率 (IR) の推移は対数曲線に極めて近似した (R2=0.69-0.96). このAUC-IR曲線の信頼性は高く, 5-FUの効果はAUCに依存していると思われた. このAUC-IR曲線よりAUC IR50を個別に求めた. AUC IR50達成がindividualized adjuvant chemotherapyのend-pointとなり得る可能性が示唆された. AUC IR50は再発High risk Dukes Bの選別に有用と考えられた. Dukes D症例ではAUC IR50の2倍を早期に達成するレジメを個別に立案することが予後向上につながると考えられた. CD-DSTを駆使することにより癌の個性からみた治療戦略, いわゆる個別化治療に一歩近づいたと考えられた.

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