順天堂医学
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原著
脳卒中退院患者からみた在宅療養生活開始時の現状と課題
美ノ谷 新子佐藤 裕子宮近 郁子陣川 チヅ子大西 美智子藤原 泰子星野 早苗山崎 純一
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2008 年 54 巻 1 号 p. 73-81

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抄録
目的: 脳卒中患者がスムーズに在宅療養生活に移行できる援助が求められている. そこで脳卒中の退院時における困惑, 困難とその対応の実態と課題を患者の立場から明らかにすることを目的とする. 対象: 脳卒中の初回在宅移行が平成12年4月以降で, 現在首都圏に住む在宅療養中の患者とその家族である. 方法: 調査期間は平成17年12月から4ヵ月間. 項目選択型質問紙を用いた聞き取り調査で, 内容は脳卒中の初回在宅移行時の日常生活動作 (ADL) ・心身の状況, 当時の困惑・困難と退院指導など約30項目で, カイ二乗検定などの分析を行った. 結果: 有効回答は52例 (92.9%) で, 以下の点が確認された. (1) 本人・家族の困りごとは約半数にあり, ADLと心身に不自由・不具合のあるものに多かった. (2) 入院期間3ヵ月以上群・転院あり群はADLと心身に不自由・不具合のあるものが多かった. (3) 困りごとを抱える者は, 退院指導を受ける率が高かった. (4) 入院期間3ヵ月以上群・転院あり群は退院指導を多くうけ, 担当者会議も多く, 退院への準備を整えていた. (5) 入院期間3ヵ月以上群と3ヵ月未満群および転院ありとなし群比較では, 本人・家族の困りごとに差は見られなかった. (6) 入院期間3ヵ月以上群は転院あり群が多かった. (7) リハビリ目的の入院や転院は, 本人・家族が心身機能の回復と限界を受容し認識する機会となり, 心身の慣らし等退院後の準備を整えていた. 結論: 3ヵ月以上の入院期間や転院あり群はADLと心身に不自由・不具合はあるものの, 退院指導や担当者会議が行われ退院の準備を整えていた. ADLと心身に不自由・不具合のあることは退院時の困りごとの要因ではあるが, 本人と家族の意思決定を促す退院準備を行うことで心配や困りごとの負担は軽減される. 本人と家族の退院時の困りごとは, 物理的, 精神的な準備が整わない状況で退院することにあり, 本人と家族は安心して退院できる準備を整えることを求めている.
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© 2008 順天堂医学会
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