順天堂医学
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原著
SLEの病態形成に遺伝子の転写機構が関与する可能性について
景山 倫彰小笠原 均山路 健高崎 芳成
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2008 年 54 巻 4 号 p. 474-479

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抄録

遺伝的な要因は, SLE (Systemic Lupus Erythematosus) の病態の形成に重要である. さまざまな遺伝子産物がSLEの病態形成に関与するという仮説が述べられてきた. しかしながら, SLEの病態形成の誘因, 病態形成に直接関与する遺伝子群は, 未だ不明である. これらの機序を解明することは, SLEの発症要因を特定するうえで重要である. 一方, いわゆるエピジェネティックな機序である, DNAのメチル化, ヒストンのアセチル化など遺伝子の転写制御機構は, 広く知られている. この研究の目的は, DNAのメチル化, ヒストンのアセチル化がSLEの病態形成に関与しているかを検討するところにある. このため, DNAのメチル化に関与するDNMT1 (DNA (cytosine-5) -methyltransferase1) 遺伝子, DNMT3b (DNA (cytosine-5) -methyltransferase 3beta) 遺伝子とヒストンのアセチル化に関与するPCAF (p300/CBP-associated factor) 遺伝子, GCN5遺伝子に注目した. real-TimePCRを用いて, 20例のSLEと健常人20例の末梢血単核球 (peripheral blood mononuclear cells: PBMC) を用いて, 各遺伝子の定量を施行した. この結果, SLE群でDNMT1遺伝子の発現量が, 健常人群に比較して有意に低下していた. DN-MT3b遺伝子には, 両群における発現量の差はみられず, ヒストンのアセチル化に関与するPCAF遺伝子とGCN5遺伝子にも両群における発現量の差は, みられなかった. このことより, DNAのメチル化に関与するDNMT1遺伝子は, SLEの病態形成に関与する可能性がある.

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© 2008 順天堂医学会
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