抄録
関節リウマチ (RA) は関節滑膜を病変の主座とする全身性の慢性炎症性疾患であり, 罹患関節では腫脹・疼痛のみならず骨・軟骨の破壊の進行が認められ, 患者の日常生活動作やQOLはいちじるしく低下する. しかし, RAの薬物治療は特にこの数年, 生物学的製剤の登場により目覚ましい進歩を遂げている.
RAの治療薬の中心となるのは, 炎症のみならず関節破壊を抑制する可能性をもつ抗リウマチ薬 (DMARDs) である. 関節破壊は発症後数年間で急速に進行するため, RAの診断がついたらなるべく早い時期に有効性の高いDMARDsを使用することが必要である. メトトレキサート (MTX) は有効性および継続率が高く関節破壊抑制のエビデンスが強いことから, RA治療のアンカードラッグであり, MTX未使用で治療効果が不十分な症例にはMTXを使うことが強く奨められる. さらに効果が不十分であったり骨破壊が進行する場合には, 生物学的製剤の併用が検討される.
現在RAに適応がある生物学的製剤はTNF阻害薬3剤 (インフリキシマブ, エタネルセプト, アダリムマブ), IL-6阻害薬1剤 (トシリズマブ) であり, MTXとこれらの併用が最も有効性が高い治療法である. 生物学的製剤は, 臨床効果に加え関節破壊抑制効果が強く, 症例によっては骨びらんの修復が認められることもある. また早期RAの寛解症例では, TNF阻害薬のみならずすべての薬剤が止められる, drug freeが可能となる場合がある. 一方で, 生物学的製剤使用においては重篤な感染症などの副作用に注意が必要であり, 投与前のスクリーニングや予防投与, 投与後の定期的モニタリングが必須である.
現在, RAに対する新たな生物学的製剤や細胞内シグナル伝達分子を阻害する低分子化合物の治験が行われ高い有効性が示されている. 今後は早期から積極的な治療を行うことで臨床症状のみならず関節破壊を抑え, 患者のQOLを保ち治癒を目指すことがRA治療のゴールとなっていくと考えられる.