順天堂医学
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総説
2型糖尿病腎症・IgA腎症治療について自然発症マウスモデルから学ぶこと
富野 康日己
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2009 年 55 巻 3 号 p. 228-234

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抄録

本総説は, 2型糖尿病腎症とIgA腎症に対する新しい治療法について自然発症動物モデルであるKK-Ay/TaマウスとddYマウスを用いて検討したものである. 糖尿病腎症は, 末期腎不全の主要な原因疾患で, ヒト腎症の糸球体では, メサンギウム基質の拡大, 滲出性病変, 分節性硬化が特徴である. 当教室では, KK-Ay/Taマウスの腎病変は, ヒトの糖尿病腎症の初期病変に酷似し, 糸球体メサンギウム領域には, 終末糖化産物 (AGEs) やTGF-βの蓄積が認められることを明らかにした. このことから, KK-Ay/Taマウスは, 2型糖尿病腎症の自然発症モデルとして, 使用可能であると考えられる. 現在, AGEs産生抑制効果のある薬物として, aminoguanidine, phenacyl thiazoilum bromide, OPB-9195, 2, 3-diaminophenazine, vitamin C・E, ARBやpyridoxamineが知られている. また, EPA製剤には, 抗血栓作用, 脂質低下作用, 抗動脈硬化・炎症・分裂作用があるといわれている. 私達は, pyridoxamineとEPAの投与は, KK-Ay/Taマウスの糖尿病腎症を改善させうることを報告した. IgA腎症は, 最も頻度の高い慢性糸球体腎炎であり, 糸球体メサンギウム領域にIgA (IgA1), IgG, C3の顆粒状沈着とメサンギウム基質の拡大, メサンギウム細胞の増殖が特徴である. 1985年Imaiらが, ddYマウスがIgA腎症に非常に類似した病変を呈することを報告して以来, 実験に広く用いられている. 私達は, ddYマウスにPSL封入リポソーム (PSL-liposome), 免疫抑制薬であるmizoribine, モノクローナルマウスCD4抗体のそれぞれを投与し, 腎病変を改善させることを報告した. また, 早期発症ddYマウスに沈着するIgAは, 未発症ddYマウスの骨髄を移植することで減退した. このことから, 本症の発症に骨髄細胞の関与が示唆される.

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© 2009 順天堂医学会
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