順天堂医学
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原著
手指衛生の遵守率向上に寄与する病棟建築要素の検討
崎村 雄一堀 賢森本 正一伊藤 昭平松 啓一
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2009 年 55 巻 4 号 p. 487-493

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抄録
目的: 病棟内での感染制御対策として, 手指衛生は最も重要な対策である. しかし病院計画を行う上では, 医療従事者の手洗設備の設置に対して設置数や位置についての基準や指針は無い. そこで本研究では, レイアウトの違う病院において病棟看護師の行動を調査・分析することで, 手洗い設備の必要な場所を検証し, 手指衛生上適切な配置を検討した. 対象: 調査対象病棟は, 2つの急性期病院の内科系病棟で, 対象看護師は各勤務帯2名選定した. 方法: 調査員が対象看護師の追跡調査を行い, 動線, 作業内容, 手指衛生の遵守率の調査を行った. その結果をもとに, 手洗い設備の再配置の検討を行った. 結果: 看護師の病棟内での作業場所時間比率や移動先比率の比較から, 病棟プランの違いや看護師の違いによる明らかな差異はなかった. しかし, 手指衛生に関しては, 遵守率に大きな差が生じた. 考察: 結果の要因としては, 手洗い設備の設置台数の違いや感染対策に対する教育の違いが関与していると考えられた. さらに, 看護師の行動軌跡からは, 動線上に手洗い設備がないために手指衛生が実施されていない場所があったことから, 両病棟での手洗い設備の配置の改善の検討および改善後の効果を予測し, 最大+16.3%の手指衛生遵守率の向上が期待できる結果が得られた. 結論: 看護師の行動調査・分析と, 手指衛生を行うための手洗い設備の役割を明確化し, 病棟内での的確な場所への手洗い設備の設置が手指衛生遵守率の向上に寄与することが予測できた. さらに, 病室を中心とした汚物処理エリアと準備エリアの適正な配置を行うことが, 感染リスクの低減に寄与する可能性が示唆された.
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© 2009 順天堂医学会
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