順天堂医学
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原著
大学生競技者に生起するネガティブ・スピルオーバーと抑うつの関連性
山田 泰行岡 康大川田 裕次郎水野 基樹広沢 正孝
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2009 年 55 巻 4 号 p. 502-510

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抄録

目的: 本研究は大学生競技者の抱える『大学生』と『競技者』という多重役割間でネガティブ・スピルオーバー (NSP) が生起することを確かめ, それが抑うつにどの程度の影響力を示すのかを検証することを目的とする. 対象: 体育系大学の運動部に所属する競技者を対象とした (研究1;67名, 研究2;254名). 方法: 大学生競技者にNSPが認められるか否かを確認するため, 自由記述式の質問紙調査を行った (予備調査). 予備調査において得られた記述を基に作成されたNSP項目と, 抑うつ尺度 (SDS) を用いて質問紙調査を実施した (本調査). 結果: 予備調査を通して, 大学生競技者の訴えるストレスの中にNSPに相当する現象が観察された. 本調査ではNSP項目を用いて因子分析を行った. その結果, 2つの方向性のNSPはそれぞれ心理的な現象 (A-S-PsNSP, S-A-PsNSP) と物理的な現象 (A-S-PhNSP, S-A-PhNSP) で構造化された. NSPと抑うつの相関においては, 全サンプルのとき大学生から競技者へのNSPが抑うつと有意に相関した (r>.20, p<.05). また, 特定の競技プロフィールを満たす者においては, 全てのNSPが抑うつと有意に相関した (r>.20, p<.05). 結論: 以上の手続きから以下の4つの結論が導かれた; (1) 大学生競技者が訴えるストレスの中には多重役割問で生起するNSPが認められる. (2) NSPは抑うつに対して影響力をもち得る.

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© 2009 順天堂医学会
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