順天堂医学
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原著
急性薬物中毒611 例の分析と入院の必要性に関連する患者背景因子の検討
杉田 学野村 智久関井 肇
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2011 年 57 巻 6 号 p. 617-623

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抄録

目的: 急性薬物中毒患者は背景に精神疾患をもつことが多く, 入院となった場合精神科医の常駐しない病院では受け入れを躊躇することがある. 本研究の目的は, 当院で経験した急性薬物中毒症例を分析し, 適切な病院選定を行うために, 搬送前に得られる情報からどのような患者背景が入院に関連するかを明らかにすることである. 対象と方法: 過去4年間に当院を受診した611症例の急性薬物中毒を対象に後ろ向きに検討した. 患者の背景, 病院到着前の患者情報, 診療内容, 転帰を調べ分析した. 性別による患者背景や治療内容の違いや, 入院と関連がある患者背景について統計学的検討を行った. 結果: 対象のうち死亡例はなく, 入院となったのは289名 (47%) であった. 性別による患者状態や治療内容の違いはなかった. 入院と関連が高い因子は, 高齢 (p=0.0006), 重度の意識障害があること (p=0.0001), 50錠 (包) 以上の大量の内服があること (p<0.0001) であった. 一方, 精神科受診歴の有無, 内服後搬送の時期, 付き添いの有無は, 入院との有意な関連性はみられなかった. 結語: 重度の意識障害や大量の内服症例は入院となる可能性が高いため, 入院可能な施設へ搬送するべきである. 一方で精神科受診歴があることや内服早期であること, また付き添いがいないことは入院させることができない施設でも受け入れを拒否する理由とはならず, これらの患者を一旦受け入れることで, 搬送困難症例を減らすことができる.

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© 2011 順天堂医学会
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