順天堂医学
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原著
ジエチルニトロソアミン投与後肝障害におけるオートファジーの関与について
米合古麗 阿不都雪克山科 俊平池嶋 健一小松 雅明田中 啓二渡辺 純夫
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2012 年 58 巻 4 号 p. 319-324

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抄録
目的: ジエチルニトロソアミンは多くの食物に含まれている発癌物質の一つであるが, チトクロームP450代謝を介した酸化ストレス産生による肝細胞毒性が肝発癌において重要な役割を果たすことが明らかとなっている. 今回, ジエチルニトロソアミン投与後肝障害におけるオートファジーの役割について検討した. 方法: コントロールマウス (Atg7F/F) と肝特異的オートファジー欠損マウス (Atg7F/F: MX1-Cre) を使用し, ジエチルニトロソアミン (10mg/kg) 腹腔内投与48時間後の血清と肝組織を採取した. 血清中ALT値測定により肝障害を評価した. アポトーシス細胞検出のためにTUNEL染色を行い, 肝組織中Microtubule-associated protein1 light chain 3 (LC3) 発現, mammalian target of rapamycin (mTOR), カスパーゼ-3, 7活性化をウエスタンブロット法によって評価した. 結果: ジエチルニトロソアミン腹腔内投与はコントロールマウス肝のmTOR活性化を抑制しLC3-II発現を増加した. 一方, ジエチルニトロソアミン投与48時間後の血清ALT値は肝特異的オートファジー欠損マウスではコントロールマウスの約7倍に増加した. またジエチルニトロソアミン投与後のTUNEL陽性細胞は肝特異的オートファジー欠損マウスでは, コントロールの約3倍となった. またオートファジー欠損によりジエチルニトロソアミン投与後のカスパーゼ3と7活性化が強く誘導された. 結論: オートファジー欠損によりジエチルニトロソアミン投与後の肝障害・アポトーシスが増加した. ジエチルニトロソアミン投与によって誘導されるオートファジーは細胞保護的に作用するものと推測され, 肝発癌においても抑制的に作用する可能性が示唆された.
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© 2012 順天堂医学会
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