順天堂医学
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原著
乳腺手術におけるazithromycin経口投与のsurgical site infection (SSI) 発生予防効果について
伊藤 嘉智福永 正氣須田 健平崎 憲範鷲尾 真理愛
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2012 年 58 巻 4 号 p. 334-339

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抄録

背景: 乳腺手術のような清潔手術では主にグラム陽性球菌がsurgical site infection (SSI) の原因であり, それを防ぐために手術開始30分以内にペニシリン系または第1世代セフェム系抗菌薬を投与することが有効といわれている. 目的: アジスロマイシン (AZM) は主にグラム陽性菌に抗菌スペクトルをもつ経口抗菌薬であり, 乳腺手術において抗菌薬の経静脈投与と同等のSSI発生予防効果が得られる可能性がある. 対象と方法: 今回われわれはドレーン留置を要する乳腺手術を施行した39例を無作為にAZM内服群21例とセファゾリンナトリウム (CEZ) 注射群18例に振り分け, 内服群は手術前日にAZM2gを内服し注射群は手術直前にCEZを点滴静注してSSIの発生頻度につき比較検討した. なお乳腺手術は清潔手術のため両群間の手術術式の差異におけるSSI発生リスクは同一とみなした. 結果: 結果はいずれの群でもSSIはみられなかった. 有害事象はAZM内服群で下痢が3例 (14.3%), 肝酵素上昇が1例 (4.8%) みられ, CEZ注射群で肝酵素上昇が1例 (5.6%) みられたがいずれも軽微なものであり追加治療を必要としなかった. またAZM内服群の手術検体中のAZM濃度を測定したが, 測定した全症例で黄色ブドウ球菌 (MSSA) や表皮ブドウ球菌に対するAZMの最小発育阻止濃度を上回っており, 十分な抗菌効果を有していた. 結論: AZM経口投与は乳腺手術におけるSSI発生予防効果においてCEZ経静脈投与と同等の効果があると思われる.

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© 2012 順天堂医学会
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