発達心理学の研究成果においては,絵本の読み聞かせに関連する子どもの反応と, 日常生活における子どもの反応との間には順序性があることが示されており,こ の順序性の解明は,子どもの発達メカニズムの解明において大きな意義を持つ. しかし,その順序性が示されたのは1996年であり,調査当時から現在までの間に, 子どもの生活や絵本との関わり方には様々な変化が生じ,発達順序性にも影響を 与えていると考えられる.そこで,本論文では,1996年における発達順序性との 対比を行うために,1996年の調査において用いられたものと同一の質問項目を用 いることにより,2020年時点における新規の質問紙調査を実施し,1996年と2020 年との間で順序性の比較分析を行った.その結果,絵本に対する興味に関連する 子どもの発達は,日常生活における絵本以外に関連する子どもの発達に比べて早 まる傾向にあることが分かった.一方で,絵本に関する発達のうち,子どもの発 話を必要とする発達については,極端に早まるという傾向は見られなかった.