主催: 一般社団法人 人工知能学会
会議名: 2025年度人工知能学会全国大会(第39回)
回次: 39
開催地: 大阪国際会議場+オンライン
開催日: 2025/05/27 - 2025/05/30
本稿では,従来の「予測符号化」(Predictive Coding: PC) を多エージェント環境に拡張した「集合的予測符号化」(Collective Predictive Coding: CPC) を概説し,人間とAIを含む複数のエージェントが共通の外部表象(言語やシンボル等)を通じてどのように協調・調整できるかを理論的に考察する.まずPCとCPCの枠組みをベイズ推論的に捉え,その最適化過程がLangevin型の確率微分方程式で表せることを示す.特にCPCの場合には,エージェント間を結び付ける追加のポテンシャル項が「外部からの力」として振る舞う点が特徴的である.そのため,こうしたLangevin力学がFokker--Planck方程式によって同じ事後分布(ベイズ推論が与える分布)に収束する仕組みを改めて詳細に示し,さらにシンボル共有による「集合的」な効果や通信制約が及ぼす影響などについて論じる.本研究は,人間--AI混在のマルチエージェント環境をより安全かつ協調的に制御するための基礎を提供するものである.