日本応用数理学会年会予稿集
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セッションID: W02
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W02 自己組織化現象の数理モデルとシミュレーション
反応拡散方程式を使った発生生物学 -魚の体表パターンを例に-
望月 敦史
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抄録

魚類の体表の縞模様には2つの一般的な特徴がある。第1に体軸に平行な縞と垂直な縞の2つのタイプが普遍的であり、それ以外の縞は少ないこと。第2にごく近縁の種であっても、全く異なるタイプの縞模様を持ちうることである。これまで魚類の体表模様の自律的形成は、反応拡散機構により説明されてきたが、これらの強い方向性については説明されていない。皮膚の空間構造に注目し、特定方向には物質がより速く移動するような異方的拡散を取り入れたモデルを、数値計算と解析により研究した。その結果、縞模様形成に関わる複数の物質の間で拡散の異方性がわずかでも異なると、得られる縞の方向が定まると分かった。またその方向は、異方性の大小関係により、異方的拡散の方向と平行であるか垂直であるかのいずれかに決まる。以上より魚類体表の一般的特徴がうまく説明できる。時間が有れば生物の形態形成について数理モデルを用いた研究を他にも紹介したい。

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© 2002 日本応用数理学会
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