有明海では1980年頃から赤潮の発生が認められるようになり, 近年では発生時期および範囲が拡大し, 2000年の海苔不作は赤潮が原因と言われる等, 深刻な問題となりつつある. 最近の観測では, これまで見られなかった底層の貧酸素化が認められ, 二枚貝をはじめとする底生生物への影響が懸念されている. しかし連続観測の不足から赤潮発生の条件や貧酸素水塊の形成に至る過程が明らかにされていないため, 有明海における富栄養現象の実体には不明な点が多い. そこで本研究では多項目水質の長期連続観測を実施し, 2001年に発生した赤潮や貧酸素化の過程を把握した. さらに数値シミュレーションにより風に対応した貧酸素水塊の動態など一連の水質動態を明らかにした.