情報システム学会 全国大会論文集
Online ISSN : 2433-9318
第5回全国大会・研究発表大会論文集
セッションID: E2-5
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E2セッション 「業務プロセスと情報システム」
企業ITの戦略的価値に関する一考察 -論文「IT Doesn’t Matter」の批判的検討を手がかりに-
*依田 祐一
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抄録
本稿の目的は、企業情報システムの戦略的価値について既存研究のレビューを手がかりに考察することである。 Carr は、企業向けソフトウェアの汎用化やクラウドコンピューティングの台頭による企業情報システムの戦略的価 値の低下を一貫して主張してきており、特に企業IT の戦略的価値に関する論争のきっかけとなったCarr(2003)の論 文「ITDoesn’t Matter」とこれに続くCarr の論文等1を手がかりとする。 Carr(2003)[1]は、IT は電気や水道のようにコモディティ化が進行してきたため、競争優位性の条件としての希少性 が失われ、もはや戦略的な重要性は低下してきており、これからのIT 投資は、攻めから守りへ、つまり投資を抑制 し、リスクが減じた段階まで購入を控え、IT による機会でなく、脆弱性に焦点を合わせることを主張した。実践的 にも、企業IT や企業IT 部門をノンコアと位置づける企業も散見される。 本稿では、Carr の一連の主張に対する批判的検討を手がかりに、Carr の論拠における前提の問題点、IT の希少性 が競争優位性を担保し、またIT による競争優位性は容易に複製されるというCarr の前提には慎重に考慮しなけれ ばならない点があることを示す。
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© 2009 一般社団法人 情報システム学会
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